かもめ通信さん
レビュアー:
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久々にこの本を手に取ったのは、最近彩流社から刊行されたペソアの『アナーキストの銀行家』を読んだからだったのだが……。
久々にこの本を手に取ったのは
最近彩流社から刊行されたペソアの 『アナーキストの銀行家』を読んだからだ。
そういえばこの本のどこかに銀行家が出てきたはず
そう思って再読しようとしたのだが、
これがなかなか長い道のりなのだ。
そもそもこの本は長らく絶版で
古書にもそれなりの値がついているので
欲しい欲しいと思いながら、私は未だに持っていない。
おまけにいつも利用する図書館にもないので
他館から借り出してもらわなければならないのだ。
ぜひとも白水社Uブックスあたりで復刊してもらいたいものだと思いつつ、
久々にページをめくると、
復刊は難しいかもしれないと、ちょっと弱気になる。
とても好きな作品なのだ。
けれども、誰にでもお勧めできるという作品でもない。
そもそも私自身、はじめて読んだ時には
今ひとつ、ふたつ、みっつ、ぴんとこなかった。
元々タブッキに惚れ込んで
あれこれ読みあさっていたときに出会った本で、
当時はタブッキの作品を通じてしか
ペソアのことを知らなかったから、
この本を読んでも、タブッキがペソアの死を悼んでいるのだということはわかっても
死の床につくペソアの元に
次々と訪れる面々が誰なのかということが、
作品の最後に添付されている登場人物紹介を読んでも
巻末の訳者解説で、それらが皆、
ペソアの異名だったりその作品の登場人物だったりするのだと
説明されてもなお、
そうなんだ~としか思えなかったのだ。
やがて改めてペソア自身に会い
その魅力を知ってから、
再びこの本を手にした時、
タブッキのペソアとその作品への強い想いに改めて心を打たれた。
結論から言うと
確かに銀行家は登場するけれど、
一緒に食事をしたのは「会計助手」のベルナルド・ソアーレスで
ソアーレス氏はその会合で
生まれて初めて牡蠣をや伊勢エビを食べて感激したらしく
「調子が良くなったら妹さんに作ってもらえるように」と
死の床につくペソアに伊勢エビ料理のレシピを熱心に説明したりしていた。
あいかわらずサマルカンドに憧れていて
ウズベク語を少し勉強したのだという。
次々とやってくる見舞客とのやりとりには
クスッと笑えるようなツッコミどころもあり、
切なくなるようなシーンもある。
とりわけ印象的なのはリカルド・レイスがペソアに告白するくだり。
この本はタブッキのペソアへの愛が詰まった1冊ではあるが、
同時にいかにもタブッキらしい1冊でもあった。
最近彩流社から刊行されたペソアの 『アナーキストの銀行家』を読んだからだ。
そういえばこの本のどこかに銀行家が出てきたはず
そう思って再読しようとしたのだが、
これがなかなか長い道のりなのだ。
そもそもこの本は長らく絶版で
古書にもそれなりの値がついているので
欲しい欲しいと思いながら、私は未だに持っていない。
おまけにいつも利用する図書館にもないので
他館から借り出してもらわなければならないのだ。
ぜひとも白水社Uブックスあたりで復刊してもらいたいものだと思いつつ、
久々にページをめくると、
復刊は難しいかもしれないと、ちょっと弱気になる。
とても好きな作品なのだ。
けれども、誰にでもお勧めできるという作品でもない。
そもそも私自身、はじめて読んだ時には
今ひとつ、ふたつ、みっつ、ぴんとこなかった。
元々タブッキに惚れ込んで
あれこれ読みあさっていたときに出会った本で、
当時はタブッキの作品を通じてしか
ペソアのことを知らなかったから、
この本を読んでも、タブッキがペソアの死を悼んでいるのだということはわかっても
死の床につくペソアの元に
次々と訪れる面々が誰なのかということが、
作品の最後に添付されている登場人物紹介を読んでも
巻末の訳者解説で、それらが皆、
ペソアの異名だったりその作品の登場人物だったりするのだと
説明されてもなお、
そうなんだ~としか思えなかったのだ。
やがて改めてペソア自身に会い
その魅力を知ってから、
再びこの本を手にした時、
タブッキのペソアとその作品への強い想いに改めて心を打たれた。
結論から言うと
確かに銀行家は登場するけれど、
一緒に食事をしたのは「会計助手」のベルナルド・ソアーレスで
ソアーレス氏はその会合で
生まれて初めて牡蠣をや伊勢エビを食べて感激したらしく
「調子が良くなったら妹さんに作ってもらえるように」と
死の床につくペソアに伊勢エビ料理のレシピを熱心に説明したりしていた。
あいかわらずサマルカンドに憧れていて
ウズベク語を少し勉強したのだという。
次々とやってくる見舞客とのやりとりには
クスッと笑えるようなツッコミどころもあり、
切なくなるようなシーンもある。
とりわけ印象的なのはリカルド・レイスがペソアに告白するくだり。
親愛なるペソアくん、わたしはブラジルに行ったことなんかないんです、そう言ってみんなを、もちろんあなたも、騙してきたんです、実際は、ずっとポルトガルにいて、ある小さな村に身を隠していたんです。
この本はタブッキのペソアへの愛が詰まった1冊ではあるが、
同時にいかにもタブッキらしい1冊でもあった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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この書評へのコメント
- かもめ通信2019-08-02 06:26
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