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Wings to fly
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わくわく感と喜びが、ページの向こうに弾けている。厳寒の季節を描きながら、なんと心を温めてくれる物語なのだろう。
薄くてさわるとすぐに割れてしまう最初の氷は、お楽しみの到来を告げる合図だ。庭のカエデの木の枝が寒さでピシッと鳴る音が聞こえたら、いよいよ待ちに待った季節がやって来る。

まず畑が凍り、やがて小川や池も凍る。初雪が降り始めると、家の菜園はスケートリンクに変わる。家族総出で作った「ブライアンガーデンズ」に明かりが灯り音楽が流れ、男子はホッケースティックを持って、女子はフィギアのスケート靴を持って集まってくる。リンクマネージャー(ママ)はスケジュール(場所の取り合い)をきっちり管理。大喜びで何時間も滑った後、ロッカールーム(物置)から笑い声が響く。

氷にうつる青空や木々、キラッと光るスケート靴のブレードや、氷の上に細い線を刻む音。季節の移り変わりは12種類の氷に表現され、冬の手触りが肌で感じられる。吸い込むと胸がキーンとなる空気の冷たさも、滑って行く時のスピード感も。ページの向こうには冬の喜びが煌めく。

スケートリンクを整備しながら、ほうきを抱いてワルツを踊るパパ。完璧な氷が出来たらスケートパーティーだ。焼きマシュマロやポップコーンの匂いが漂い、ママは大きなポットにココアをたくさん用意する。ご近所の親たちもやってくる。寒いなんて誰も文句を言わない。この人たちはその時期にしか味わえない楽しみ方をちゃんと知っていて、それをみんなで分かち合う。だから読んでいると心がぽかぽか温かくなってくる。

月だけが煌々と照らす深夜のリンクで、くるくるとスピンを決める少女。わずか60ページほどの物語には、作者の思い出と家族の愛情がぎっしり詰まっている。子どもの頃の楽しい冬の記憶が呼び起こされて、切なさが込み上げてくる。大人にはもう、こんなにキラキラする季節は巡って来ない。

春が来てリンクの氷が溶けた後には「12番目の氷」が残る。最後のページに描かれたその氷は、読んだ人の心を白銀の輝きで照らすのだ。

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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2014-02-04 07:10

    ぱせりさんのレビュー(http://d.hatena.ne.jp/kohitujipatapon/20140120/p1)も素敵だったけれど、Wings to flyさんのレビューもまたきらきらしていますねえ!
    冬の楽しみをおしえてくれそう。

  2. Wings to fly2014-02-04 07:26

    かもめ通信さんありがとうございます♪
    そうなのです。この本はぱせりさんからのご紹介で読みました。「本が好き!」を退会なさったのは残念ですが、本を通じてのお付き合いを続けさせて頂いていることに感謝!本は人を繋げますね。
    もうすぐ冬のオリンピック。12番目の氷よ、選手にも子どもたちにも輝け*\(^o^)/*

  3. Kurara2014-02-05 19:00

    Wings to flyさん♪
    そうそう、私もぱせりさんの書評を拝見して、この冬に必ず読もうと思っていました(^。^)
    装丁からしてもうワクワクしちゃっています。読む前から☆5つの予感ですw

  4. Wings to fly2014-02-05 21:43

    Kuraraさん
    その予感が当たりますように!
    子どもの頃の幸せな記憶はいつまでも人生を照らすのだと思い、ちょっと羨ましい気持になります。でもそのお裾わけをもらって幸せに浸れます♪
    うっとり・・・♪

  5. No Image

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