かもめ通信さん
レビュアー:
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この作品、日米開戦を肯定する作品と読むべきか、はたまたその逆かと読み手によって意見が分かれてきたというのだが……。
『十二月八日』は、昭和17年に「婦人公論」に掲載された太宰の短編で、作家の夫をもつ「日本のまづしい家庭の主婦」が書いた「昭和16年12月8日」の「日記」という設定になっている。
100年後、偶然見つけた誰かがこの日記を読んだなら、どんな思いを抱くだろうかと前置きしながら綴るのは、朝、ご近所の家から聞こえてきたラジオのニュースで開戦を知った「私」の興奮。
喜びと期待に胸が膨らむ一方で、なんとなく「心許ない」気持ちを抱く「私」のつれづれなる想いを綴った「日記」は、戦争賛美小説なのか、はたまたその逆なのか、物議を醸してきた作品でもある。
朝のラジオから始まって、ご近所さんとの井戸端話、主人の留守中に訪ねてきた若者たちに対するあれこれや、自分の頼りない夫に比べてご近所の「頼もしい」ご主人について述べる様子等々、つらつらと語られる一日の様子から、「私」がどこかとんちんかんで、人の心の奥底を推し量り、気遣い、それ故に思い悩むようなタイプではないことがほのめかされていく。
だからこそ、「私」が夫について書き記すあれこれの中に、彼女の受け止めとはまるで違う人物が浮かび上がり、同時にその日の興奮が単に喜びに基づくものだけではないことが暗示される。
一見しっかりしているようでどこか調子っぱずれで、あてにならないといいつつ夫を頼りにする妻を前に、身のうちの不安を押し隠すようにして、時に無関心を装い、時におどけてみせる夫に、太宰の姿を見る。
戦時下に開戦の日の「高揚」を描いた作品とみせて、合間合間に実に細やかに、戦争というものに皆が抱いていた不安な気持ちを見事に描きだしているものと私は読んだが、皆さんのご意見はいかがだろうか?
100年後、偶然見つけた誰かがこの日記を読んだなら、どんな思いを抱くだろうかと前置きしながら綴るのは、朝、ご近所の家から聞こえてきたラジオのニュースで開戦を知った「私」の興奮。
喜びと期待に胸が膨らむ一方で、なんとなく「心許ない」気持ちを抱く「私」のつれづれなる想いを綴った「日記」は、戦争賛美小説なのか、はたまたその逆なのか、物議を醸してきた作品でもある。
朝のラジオから始まって、ご近所さんとの井戸端話、主人の留守中に訪ねてきた若者たちに対するあれこれや、自分の頼りない夫に比べてご近所の「頼もしい」ご主人について述べる様子等々、つらつらと語られる一日の様子から、「私」がどこかとんちんかんで、人の心の奥底を推し量り、気遣い、それ故に思い悩むようなタイプではないことがほのめかされていく。
だからこそ、「私」が夫について書き記すあれこれの中に、彼女の受け止めとはまるで違う人物が浮かび上がり、同時にその日の興奮が単に喜びに基づくものだけではないことが暗示される。
一見しっかりしているようでどこか調子っぱずれで、あてにならないといいつつ夫を頼りにする妻を前に、身のうちの不安を押し隠すようにして、時に無関心を装い、時におどけてみせる夫に、太宰の姿を見る。
戦時下に開戦の日の「高揚」を描いた作品とみせて、合間合間に実に細やかに、戦争というものに皆が抱いていた不安な気持ちを見事に描きだしているものと私は読んだが、皆さんのご意見はいかがだろうか?
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:
- ページ数:10
- ISBN:B009IX7346
- 発売日:2012年09月27日
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