関西圏に住む自分はあいにくと展覧会自体には行っていないのだが、こうして眺めてみるになるほど楽しい展示だったことだろうと思う。
冒頭には、「かわいい」について考察する解説文が収録される。
「かわいい」と思う感情とはそもそもどういうものなのか。「かわいい」と思わせるのは「対象」自体なのか「形」なのか「描き方」なのか。
読みながら自分と照らし合わせて考えると、なかなか興味深い一文である。
「かわいい絵を見るぞ」と心の準備が出来たところで、実際に収録されている絵を見ていく。
「かわいい」という括りだが、端正で写実的なものから、必要最小限の線で描かれたシンプルなものまで、振れ幅は結構大きい。
前者では円山応挙や森狙仙、後者では与謝蕪村らの俳画や白隠・仙厓の禅画が印象的である。
応挙の虎は写実的なようでいて、どこか丸みを帯びて愛らしい。狙仙の猿はまじめくさった仕草が微笑ましい。
仙厓の絵は何だかすごいほどに「ゆるい」。しりあがり寿を思い出させるようなおかしさである。問答無用に背骨が溶けてしまう。たはっと笑ってしまいつつ、「いやこれ、禅画なんだよな」と思い直すと実は壮大に深いのかもしれん、と思いながら、また絵を眺めてふひゃっと笑ってしまう。
何かを見て「かわいい」と思えるってことは、実は「余裕」なのかもしれない。折り重なった心の襞に湯熨斗をあてるように、どこかが伸びていくようで心地よい。江戸の絵画たちに「まあそう焦んなさんな」と窘められているようでもある。
忙中閑あり。
慌ただしい年末、江戸のかわいいものにふにゃっと溶かされてしまうのも悪くない。
*表紙は応挙の「狗児図」。
*近所で「応挙」展開催中。ぜひ見に行こう~。





分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
この書評へのコメント
- ぽんきち2013-12-13 00:10
Kuraraさん
あはは(^^)。ちょっと毛が妖気みたいに見えなくもないかも・・・?
応挙は幽霊画も確かに描いていますが(添付の本の表紙になっています。ここでは見えないですが画像登録したはずなので、リンク先ではでるはず・・・?)、この本では「かわいい」系です。
応挙の大作については本や図録の解説などでもよく述べられるらしいですが、グッズとして売れるのは、そういう格式張ったところでは無視されがちな子犬のかわいい系のものなんだそうです(^^)。
乙女のKuraraさんが江戸のかわいい絵をどう見られるか、もし読まれたらぜひお聞きしたいです~♪
脱力系の絵も楽しいですよ。
*出身は北陸、学生時代からしばらくは関東、その後、海外も経て、現在関西におりまする(^^;)。四国には義理の親族が一時住んでいましたが、今は縁故者はいません。てな感じです。9年住んだけど、いまだに関西弁は使いこなせていません(--;)。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - ぽんきち2013-12-13 18:28
michakoさん
きっと楽しい展覧会だっただろうなと思います。
ベースは図録なので、雰囲気はそのままなのではないかと思います。展示替えのあった絵も、また展示のなかった絵もプラスαで載っているようなので、ある意味、おトクかもしれません。
若冲やら蘆雪やら国芳やら、楽しい絵がいっぱいです(^^)。
<府中市美術館・「かわいい江戸絵画」展HP>
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/kawaiiedo/クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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