書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

ぽんきち
レビュアー:
かわいい絵にふにゃっと溶かされながら、「かわいいって何だろうか・・・?」とちょっと考えてみる
今年の春に府中市美術館で「かわいい江戸絵画」と題された展覧会があったのだそうである。これが非常な人気で、図録も会期終了前に完売、美術館で買えなかった人の要望に応えるために書籍化されたのが本書だという。
関西圏に住む自分はあいにくと展覧会自体には行っていないのだが、こうして眺めてみるになるほど楽しい展示だったことだろうと思う。

冒頭には、「かわいい」について考察する解説文が収録される。
「かわいい」と思う感情とはそもそもどういうものなのか。「かわいい」と思わせるのは「対象」自体なのか「形」なのか「描き方」なのか。
読みながら自分と照らし合わせて考えると、なかなか興味深い一文である。

「かわいい絵を見るぞ」と心の準備が出来たところで、実際に収録されている絵を見ていく。
「かわいい」という括りだが、端正で写実的なものから、必要最小限の線で描かれたシンプルなものまで、振れ幅は結構大きい。
前者では円山応挙や森狙仙、後者では与謝蕪村らの俳画や白隠・仙厓の禅画が印象的である。
応挙の虎は写実的なようでいて、どこか丸みを帯びて愛らしい。狙仙の猿はまじめくさった仕草が微笑ましい。
仙厓の絵は何だかすごいほどに「ゆるい」。しりあがり寿を思い出させるようなおかしさである。問答無用に背骨が溶けてしまう。たはっと笑ってしまいつつ、「いやこれ、禅画なんだよな」と思い直すと実は壮大に深いのかもしれん、と思いながら、また絵を眺めてふひゃっと笑ってしまう。

何かを見て「かわいい」と思えるってことは、実は「余裕」なのかもしれない。折り重なった心の襞に湯熨斗をあてるように、どこかが伸びていくようで心地よい。江戸の絵画たちに「まあそう焦んなさんな」と窘められているようでもある。

忙中閑あり。
慌ただしい年末、江戸のかわいいものにふにゃっと溶かされてしまうのも悪くない。


*表紙は応挙の「狗児図」。

*近所で「応挙」展開催中。ぜひ見に行こう~。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

読んで楽しい:20票
参考になる:11票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. Kurara2013-12-12 21:46

    ぽんきちさん♪
    遠くから見るとこの装丁に載っている絵が怖い系(幽霊かとおもった^^;)に見えてしまったのですが、ちゃんと見たら、まぁーかわゆいこと!そうか、江戸時代にもこんな感じの絵も存在したのですね。頭に思い浮かぶ江戸の絵というと困ったことに「春画」がww
    図書館にあったら見てみたいと思います。
    というか、ぽんきちさんは関西圏でしたっけ^^;関東とか北陸とか、四国とか…何故かいろんな地域が出て来ちゃいます(-"-)

  2. ぽんきち2013-12-13 00:10

    Kuraraさん

    あはは(^^)。ちょっと毛が妖気みたいに見えなくもないかも・・・?
    応挙は幽霊画も確かに描いていますが(添付の本の表紙になっています。ここでは見えないですが画像登録したはずなので、リンク先ではでるはず・・・?)、この本では「かわいい」系です。

    応挙の大作については本や図録の解説などでもよく述べられるらしいですが、グッズとして売れるのは、そういう格式張ったところでは無視されがちな子犬のかわいい系のものなんだそうです(^^)。

    乙女のKuraraさんが江戸のかわいい絵をどう見られるか、もし読まれたらぜひお聞きしたいです~♪
    脱力系の絵も楽しいですよ。

    *出身は北陸、学生時代からしばらくは関東、その後、海外も経て、現在関西におりまする(^^;)。四国には義理の親族が一時住んでいましたが、今は縁故者はいません。てな感じです。9年住んだけど、いまだに関西弁は使いこなせていません(--;)。

  3. michako2013-12-13 13:51

    これ!気になっていたんです~
    私はこの展示自体に興味があったんですが、本があるんですね!
    嬉しいなァ~
    早速探しちゃいます♪

  4. ぽんきち2013-12-13 18:28

    michakoさん

    きっと楽しい展覧会だっただろうなと思います。
    ベースは図録なので、雰囲気はそのままなのではないかと思います。展示替えのあった絵も、また展示のなかった絵もプラスαで載っているようなので、ある意味、おトクかもしれません。

    若冲やら蘆雪やら国芳やら、楽しい絵がいっぱいです(^^)。

    <府中市美術館・「かわいい江戸絵画」展HP>
    http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/kawaiiedo/

  5. Kurara2013-12-14 09:29

    ぽんきちさん♪
    わぁーありがとうございます。年内に謎が解けました(笑)ぽんきちさんはいろんなところに住んでいたのですねぇ。北陸もちょっと関西弁に近い気がするのですが、やはり別物なんですかね。でも、ある程度方言を使い分けできるのは、バイリンガル的で格好いい!^^

  6. ぽんきち2013-12-14 10:31

    Kuraraさん

    > 謎
    ww

    使い分けられていればよいのですが、びみょーにミックスされてどこ出身か不明というやや残念な状態かと(^^;)。
    あ、でも実家の方言だけは、帰るとネイティブとして喋れます <(`^´)> (あまり自慢にならんか・・・)

    北陸は、50Hz/60Hzの境界、もしくはフォッサマグナで東西が分かれるように感じます。丸餅・角餅もそうかな・・・?
    私の出身地は基本は東ですかねぇ。

  7. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『かわいい江戸絵画』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ