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当たり前のことだけど、母親って、自分が生まれたときからずっと母親なわけで、当たり前のことなのに、母にもあったはずの、夢を見て恋をする娘時代の姿はなかなか想像することが出来ないのよね。
優しい父、ユーモアにあふれた母、賑やかな妹たち、年の離れた可愛い弟、幼いローレルにとって、彼女を取り巻く世界は完璧だった。
やがて成長し、恋を知り、女優になりたいという夢を抱いたとき、世界が少しずつ違った風に見え始める。
そんなある日彼女は、突然家を訪ねてきた見知らぬ男の胸に、母がナイフを突き刺す現場を目撃してしまう。
あのとき死んだ男は確かに、母の名前を呼んだ。
あの男は、昔の母を知っていたに違いない。
後にローレルは何度もこう思い返すことになるのだが、事件当時は彼女の証言によって母の正当防衛が認められた。
そしてこの出来事は、ローレルの中に大きなしこりを残すことになった。
年を経て国民的な大女優となった彼女は、余命幾ばくもない母に付き添いながら、あの日以来自分が抱き続けていた疑問に答えを見つけるため、母の秘密を知りたいと強く願うようになっていた。
こうして、小さな手がかりの糸をたぐり寄せ、母の過去、とりわけ父と出会う前の母の過去を探ろうと、ローレルの「調査」が始まるのだった。
衝撃的なシーンながらも静かに始まる物語は、細やかに穏やかに幼かった日々と家族への「郷愁」を誘いつつ進行する。
次第に明らかにされていく「真相」にだんだんと落ち着かない気分になり、やがて衝撃のラストへと向かう物語は、不安にさいなまれながら、わずかな望みにかけてあれこれと手がかりを追うローレルの視点だけでなく、時をさかのぼって、若き日の母の、そして母の身近にいた人々の視点からも語られていく多重構造だ。
それゆえ、読者は常にローレルの先へ行くことになる。
それでもあっと驚く仕掛けによって、ゴールのテープを切るのは、主人公も読者も同時というこの構成、なかなか面白いものだった。
やがて成長し、恋を知り、女優になりたいという夢を抱いたとき、世界が少しずつ違った風に見え始める。
そんなある日彼女は、突然家を訪ねてきた見知らぬ男の胸に、母がナイフを突き刺す現場を目撃してしまう。
あのとき死んだ男は確かに、母の名前を呼んだ。
あの男は、昔の母を知っていたに違いない。
後にローレルは何度もこう思い返すことになるのだが、事件当時は彼女の証言によって母の正当防衛が認められた。
そしてこの出来事は、ローレルの中に大きなしこりを残すことになった。
年を経て国民的な大女優となった彼女は、余命幾ばくもない母に付き添いながら、あの日以来自分が抱き続けていた疑問に答えを見つけるため、母の秘密を知りたいと強く願うようになっていた。
こうして、小さな手がかりの糸をたぐり寄せ、母の過去、とりわけ父と出会う前の母の過去を探ろうと、ローレルの「調査」が始まるのだった。
衝撃的なシーンながらも静かに始まる物語は、細やかに穏やかに幼かった日々と家族への「郷愁」を誘いつつ進行する。
次第に明らかにされていく「真相」にだんだんと落ち着かない気分になり、やがて衝撃のラストへと向かう物語は、不安にさいなまれながら、わずかな望みにかけてあれこれと手がかりを追うローレルの視点だけでなく、時をさかのぼって、若き日の母の、そして母の身近にいた人々の視点からも語られていく多重構造だ。
それゆえ、読者は常にローレルの先へ行くことになる。
それでもあっと驚く仕掛けによって、ゴールのテープを切るのは、主人公も読者も同時というこの構成、なかなか面白いものだった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:336
- ISBN:9784488010089
- 発売日:2013年12月21日
- 価格:1890円
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