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はにぃさん
はにぃ
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あなたは混浴のお風呂に入りたいですか?
先日週刊誌で、1951年生まれの吉田照美さんが、「家にお風呂がない時代です。オヤジが勤めていた小さな製紙会社のお風呂にも行きました。男女混浴なんです。湯船の中で大人同士が挨拶してました。今思うとすごいですよねぇ、同僚の奥さんの裸を見てるんです。お互いにね(笑)」(週刊文春10/24号より抜粋)とおっしゃっている記事を読んだ。
昭和の中頃までそんな風習があったというのは驚きだったが、今でも日本のどこかに細々と混浴風呂が残っているらしい。
そんな混浴事情を知りたくてこの「混浴と日本史」を手にとった。

興味本位で読み始めてみると、「湯」の語源に関する考察や皇室の祭祀についてなど、内容は本当に歴史の授業の様に硬く、私が知りたかった近代の混浴事情にはあまり触れてなかったのだが、なかなか興味深い内容が満載だった。

温泉が豊富に湧き出る日本では古代より、温泉地を中心に混浴は当たり前だったらしい。
和歌の元となった歌垣(男女が歌を交わしながら気のあった相手と性的な関係を結ぶこと)が一般的だった昔は、川辺や温泉地で水浴びしながらおおらかに性を楽しんでいたようである。

記録としての混浴は「常陸風土記」(711年)から始まるとされている。
温泉は万病に効くと、老若男女が集まって市が立つほど大賑わいだったという。

そして、奈良時代には寺院で庶民に風呂を提供する「功徳湯」がスタートした。
「功徳湯」とは、庶民を入浴させることで清潔さと健康増進に寄与し、国家や仏教のありがたさを植え付ける目的の寺院の活動のことである。
その後「功徳湯」は、遷都に伴い溢れた坊さんと尼さんの混浴の場と化し、乱交に歯止めが効かなくなっていったため、「混浴禁止令」が出されてしまう。

そして、1191年に有馬温泉で入浴のお手伝いをする「湯女(ゆな)」というサービスガールが誕生した。
その後だんだん客の酒の相手もするようになり、遊女に変化していく。
それが遊郭の先がけのようになり、またまた風紀が乱れてしまうのである。

江戸時代、女性が極端に少なかった江戸では女湯は元々存在しなかったが、そこに女性客が押しかけて、自然発生的に混浴になっていった。
その後風紀が乱れ、徳川幕府により度々「混浴禁止令」が出されるが、女湯が出来ても混み合ってうるさいのでわざわざ男湯に入る女が続出して、あまり効果が無かったようである。
混んでいるサービスエリアで、男子トイレに入ってしまうおばさんと同じ感覚だろうか。

そして混浴史上最大の出来事が、黒船来航である。
混浴の風習を「淫ら」「不道徳」「下劣」と欧米人に罵倒され、明治政府が繰り返し「混浴禁止令」を出したのだ。
そんな政府の施策も、庶民にとっては馬耳東風でなかなか是正されなかったのだが。

こうして混浴の歴史を見ていくと、「純粋な混浴 ⇒ 風紀が乱れる ⇒ 取り締まり」の繰り返しであったことに気付く。
男女が裸で一緒にいたら、どうしても淫らなことを考えてしまうのだろうか。

私が今、混浴のお風呂に入れるかと考えたら・・・それはやっぱり入れないだろう。
特に、顔見知りの人とは絶対に入りたくない。
ならば、全く知らない人ばかりだったらどうだろうか?
う〜ん。やっぱり入りたくないなぁ。
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はにぃ
はにぃ さん本が好き!1級(書評数:483 件)

趣味はダンスと読書と食べること。

こちらに復帰してから読書計画が破綻気味です。
図書館の本も、期限内に読めずに返すということが増えてきました。
積読本も減らず。
それなのに読みたい本はどんどん増えていく・・・(´-ω-`)

気が向いたときに出没します。
どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. 風竜胆2013-12-13 07:44

    混浴温泉は、残念ながら噂しか聞いたことがありませんw
    風呂のあるなしについては、私が学生のころは、アパートに風呂が無いのが普通で、大学に入って、初めて銭湯なるものに行きました。

  2. 薄荷2013-12-13 07:45

    混浴は嫌ですねぇ・・・(-_-;)
    ボンキュッボンのボディなら見せびらかしたくもなるんでしょうが(いや、それはない)、ボンボンボ~ンのこのボディではちょっと・・・(^_^;)

  3. rams2013-12-13 14:53

    思い返せば何度か混浴経験があります
    中でも一番素晴らしかったのは八ヶ岳の本沢温泉
    車と自転車を乗り継ぎやっと登った先の標高2150mにあるこの露天風呂は
    エロ気分など微塵も浮かばせない雄大さがありました

  4. はにぃ2013-12-13 17:32

    風竜胆さん 私も混浴は経験したことがありません。
    おばあさんだらけのお風呂にはよく入るのですが(^^;
    昔は風呂なしアパート多かったみたいですね。
    「あなたは もう 忘れたかしら」の世界もすっかり今は昔で・・・
    友人の実家は東京で銭湯を営んでいるんですが、とうとう閉鎖することにしたらしいです。
    ちょっと寂しい( ノω-、)

  5. はにぃ2013-12-13 17:36

    薄荷さん 私だって藤原紀香さん並みのボディだったら、どこでも裸で行きますとも(嘘)
    女湯ならもう恥じらう歳ではないので平気で入っていけますが、昔の同級生たちと一緒だったらどうだろう・・・?
    ナイスバディ時代(?)をお互い知ってる関係だから、ちょっと躊躇してしまうかもしれません。

  6. はにぃ2013-12-13 17:40

    ramsさん なんと!!こんな身近に混浴経験者が!!
    それも成人式のスーツが今でも着られるramsさんとは!!
    素敵な画像ありがとうございます♪
    運動したあとにこんな大自然の中で入浴するなんてサイコーでしょうね(^-^)
    こんな場所なら混浴もいいかなぁ。人様に迷惑をかけそうだけど。
    (でも、ちょっと気になったのが狭さです。大勢で言ったら裸で密着しそう・・・)

  7. Kurara2013-12-14 09:03

    はにぃさん♪
    江戸の湯屋にもかなり衝撃を受けましたが、こちらの表紙もすごいですねぇ。
    顔だけ見てたら普通に食卓を囲んでいる人々たちの風景に見えるけど、裸なんですものね。
    パンダもびっくりだわw

  8. よみか2013-12-14 15:56

    >遷都に伴い溢れた坊さんと尼さんの混浴の場と化し、乱交に歯止めが効かなくなっていったため
    はにぃさん、さらっとお書きになっていますが
    これもビジュアル的に想像すると、す…すごい状況ですよね(^^;)

  9. ラビー2013-12-14 16:26

    混浴ではないですが・・・
    以前、東北に旅行した時に、ホテルの大浴場で、
    「あら~ラビーちゃんじゃない♪」っと声をかけられて、
    ぶったまげたことがあります。
    実家に帰った時でさえ、知人になどほとんど合わないのに、
    旅先の、しかも浴場で・・・
    しかも友人の母上にです(驚いたー

    っと言う出来事を思い出しました。

  10. はにぃ2013-12-14 16:31

    Kuraraさん 「普通に食卓を囲んでいる人々」
    この表紙の写真を見ただけでなんて鋭いんでしょう!
    同じような表現が本文に書いてありましたよ。さすがです。
    表紙の写真は、別府温泉の入浴風景でポロリはあまり露骨ではありませんが、たくさん掲載されている中にはポロリもたくさんありました。
    のどかというか、無頓着というか(^^;
    パンダ銭湯も混浴だったら・・・ん?オスとメスの区別がつかない(><)

  11. はにぃ2013-12-14 16:40

    よみかさん 確かに、ビジュアルを想像すると、こ、こわいですね(^^;
    書評には概略を書いただけですが、本文中には色々詳しく載っていました。
    尼さんとの乱交の結果、「一生不犯」のはずの僧に子供が増えてしまったとか、
    この出来事が「混浴がわいせつ視されるようになった初め」らしいです。
    (それまではのどかな庶民の混浴しかなかったのに)
    よっ!生臭坊主っ!と声を掛けたくなりますねw

  12. はにぃ2013-12-14 16:42

    ラビーさん それはまた、気まずい体験(-.-;)
    前住んでいたところはスーパー銭湯のすぐ横だったのですが、行くと必ず誰かに会ってしまうので足が遠のきました。
    露天風呂もあって良かったのになぁ。

  13. No Image

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