雅也-カヤ-さん
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フランシスとは表紙の犬の名前である(嘘)

1頁目からよくわからなかった。
読み終えて、読み返してやっと理解できた。
でもその暗いわけのわからなさにあっという間に引きずり込まれたのも本当だ。
北海道の山間にある人口800人ほどの小さな村。
そこではシカやクマが出没し、冬になると気温は零下20度まで下がり
ダイヤモンドダストがみれるという。
読みながら小学生の頃に訪れた日本一寒い町・陸別町の記憶が蘇ってくる。
主人公の撫養桂子は東京での男、仕事、生活の一切を捨て〝安地内村〟へやってきた。
郵便局の非正規社員として働き、休みの日には隣村までDVDを借りに行き、
夕飯にはちょっと凝った物を作って食べてみる。
そんな何ものにもとらわれない淡々とした田舎生活を過ごしていた桂子だった。
ある日、配達中に立ち寄った川のほとりの家で桂子は音を収集する男・寺富野に出会う。
出会ったばかりのその男は桂子に言う。
フランシスとはなんだろう。タイトルによると沈んでしまうらしい。
こうして桂子と読者は寺富野の発言にまんまと惹きつけられてしまう寸法だ。
(一歩間違えれば変質者のような発言だが)
罠にかかった桂子はこの謎めいた発言をする謎めいた男に次第に惹かれていくようになる。
謎めいた大人の男ほど魅力的なものはない(持論)
だからこそ謎は謎のままであった方がよかったのかもしれない。
寺富野の素性が次第に明らかになっていくにつれ、
彼のダメ男っぷり(と書いて「人間らしさ」と読む)がみえてくる。
そして、彼と共に過ごすうち、それまでは何事にも動じない淡白な女性に
思えていた桂子がだんだんと「ただの女」に戻っていくのがわかる。
嫉妬する女・将来に不安を感じる女・男との関係に苦悩する女。
淡々とした女も謎めいた魅力の男も互いに出会ったことで
結局はただの男とただの女になっていく。
人は恋をすることで何かを失い、何かを得るためにただの人になっていくようだ。
そして、本作品で印象的なのが二人のセックスだ。
回数を数えようとして途中で諦めた。くらいに多い。
セックスシーンは細やかに丁寧に丁寧に言葉を尽くして描かれる。
しかし、それだけ濃い書かれ方をしているのにもかかわらず
読者に粘着的な印象を与えないのが著者のすごさなのだと思う。
表現の仕方としてはおかしいかもしれないけれど、きれいなセックスを書く方だなあと思った。
著者インタビュー でも語られているけれどこの小説は感覚に訴えかけてくる。
真っ暗の中見上げた星空、不吉なくらい美しい夕焼け、静かで真っ白の世界。
そこでしか感じることのできない自然。
小説を通して私が感じた北海道はとても寒くて、静かで、美しかった。
北海道てこんなにきれいなところだったっけ。
本をとじて改めてJRからの風景を眺めてみる。
読み終えて、読み返してやっと理解できた。
でもその暗いわけのわからなさにあっという間に引きずり込まれたのも本当だ。
北海道の山間にある人口800人ほどの小さな村。
そこではシカやクマが出没し、冬になると気温は零下20度まで下がり
ダイヤモンドダストがみれるという。
読みながら小学生の頃に訪れた日本一寒い町・陸別町の記憶が蘇ってくる。
主人公の撫養桂子は東京での男、仕事、生活の一切を捨て〝安地内村〟へやってきた。
郵便局の非正規社員として働き、休みの日には隣村までDVDを借りに行き、
夕飯にはちょっと凝った物を作って食べてみる。
そんな何ものにもとらわれない淡々とした田舎生活を過ごしていた桂子だった。
ある日、配達中に立ち寄った川のほとりの家で桂子は音を収集する男・寺富野に出会う。
出会ったばかりのその男は桂子に言う。
「ぼくは音をちゃんと聴くために、ここでフランシスと暮らしている」
フランシスとはなんだろう。タイトルによると沈んでしまうらしい。
こうして桂子と読者は寺富野の発言にまんまと惹きつけられてしまう寸法だ。
(一歩間違えれば変質者のような発言だが)
罠にかかった桂子はこの謎めいた発言をする謎めいた男に次第に惹かれていくようになる。
謎めいた大人の男ほど魅力的なものはない(持論)
だからこそ謎は謎のままであった方がよかったのかもしれない。
寺富野の素性が次第に明らかになっていくにつれ、
彼のダメ男っぷり(と書いて「人間らしさ」と読む)がみえてくる。
そして、彼と共に過ごすうち、それまでは何事にも動じない淡白な女性に
思えていた桂子がだんだんと「ただの女」に戻っていくのがわかる。
嫉妬する女・将来に不安を感じる女・男との関係に苦悩する女。
淡々とした女も謎めいた魅力の男も互いに出会ったことで
結局はただの男とただの女になっていく。
人は恋をすることで何かを失い、何かを得るためにただの人になっていくようだ。
そして、本作品で印象的なのが二人のセックスだ。
回数を数えようとして途中で諦めた。くらいに多い。
セックスシーンは細やかに丁寧に丁寧に言葉を尽くして描かれる。
しかし、それだけ濃い書かれ方をしているのにもかかわらず
読者に粘着的な印象を与えないのが著者のすごさなのだと思う。
表現の仕方としてはおかしいかもしれないけれど、きれいなセックスを書く方だなあと思った。
著者インタビュー でも語られているけれどこの小説は感覚に訴えかけてくる。
真っ暗の中見上げた星空、不吉なくらい美しい夕焼け、静かで真っ白の世界。
そこでしか感じることのできない自然。
小説を通して私が感じた北海道はとても寒くて、静かで、美しかった。
北海道てこんなにきれいなところだったっけ。
本をとじて改めてJRからの風景を眺めてみる。
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■ 登録日 2012/07/26
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BLソムリエとしても色々楽しく参加中。
【めも】
2013/4/14 50書評 到達。
2013/11/19 100書評 到達。
2014/10/26 150書評 到達。
2019/1/15 200書評 到達!
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- 出版社:新潮社
- ページ数:184
- ISBN:9784103328124
- 発売日:2013年09月30日
- 価格:1470円
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