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182 PV
teppeiさん
teppei
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スウェーデンのエーランド島を舞台にするシリーズ第3弾。高齢者施設を出て自宅に戻り、一人暮らしをはじめたイェルロフ。自宅のご近所には新しい住人が越してきており、その住人が事件に巻き込まれます。
高齢者施設を出て自宅に戻り、一人暮らしをはじめたイェルロフ。自分に残された時間がだんだんと少なくなるのを自覚し、最後は自分の村で過ごしたいという気持ちからの行動でした。

自宅に戻ってみると、友人のエルンストが住んでいた石切り場のコテージは、親戚のペールが相続し、暮らし始めていました。そのペールが、本土の別荘にいる父から「迎えに来てほしい」との電話を受け、行ってみると、父は刺し傷を負っており、別荘は火を付けられ焼け落ちる、という事件に巻き込まれます。

この事件の展開と並行して、本作でもまた、過去の話が挿入されます。今回、過去の出来事は、2つの視点から語られます。ひとつは、イェルロフが自宅に残されているのを見つけた、亡き妻エマの日記です。もうひとつは、石切り場のそばの豪華な別荘に滞在するヴェンデラの、子供時代の思い出です。

エマの日記には、彼女が自宅で一人留守番をしているときに、彼女が「取りかえっ子」あるいは「トロール」と呼ぶものに何度か遭遇したことが書かれていました。他方ヴェンデラは、かつてエーランド島に住んでいた子供のころ、「エルフ」の存在を身近に感じており、エルフに願い事をしてそれがかなえられたと信じています。そして、再びエルフを身近に感じるのを楽しみにして、エーランド島に新築した別荘に夫とともに来ています。

エマとヴェンデラの視点から語られるこれらの過去の話が、ペールが父の事件の真相を究めていく様子と並行して語られます。

ところで、本書では、イェルロフの「謎を推理する」ことに対する姿勢が、一層明らかに示されているように思います。イェルロフはこれまでも、自分の推理を声高に披露することはしていません。むしろ、そこには一種のためらいがあるように感じられます。それはなぜなのか。本書ではそんなイェルロフの心情が吐露される場面があります。
父の事件の背景を調べているペールに意見を聞かれて、イェルロフはこう言います。
「わたしには謎解きや秘密の答えを見つけようとする癖がある・・・・・そうしたものを解こうとしてしまう。だが、いい結果になったことなど一度もない」
そしてイェルロフは、自らの苦い経験を語ります。

イェルロフのこの姿勢は最後にも示されます。
本書の最後では、ペールの事件は解決しましたが、エマやヴェンデラが経験した出来事については、全てが解明されたわけではありません。結局のところ、ヴェンデラが信じているように、エルフが彼女の願いをかなえてくれたということはあったのでしょうか。これについては、頭で理性的に考えた推論によっても説明は可能です。でも、それで説明しきれない部分もあって、本当のところはわかりません。エルフが関わったのかもしれない、と言うペールに、イェルロフはこう答えます。
そういうことにしておこう。この世界のなにもかもを知る必要はない
イェルロフのこの言葉には、素直にうなずけるものがあります。

秋、冬と続いた第3作の本書は、春のエーランド島が舞台でした。春とはいえ、なかなか温かさが訪れず、冬の陰鬱さから抜けきれない、じれったい思いがありましたが、最後にはようやく春の陽射しが感じられました。次作、最終作となる夏のエーランド島の物語を楽しみにしています。

・・・・・・・・
ところで、第2作の『冬の灯台が語るとき』には、エーランド島とスウェーデン本土の一部の地図がついていて、町の位置関係を知るのにとても便利だったのですが、本書には付いていませんでした。それで第2作の地図のページを開きながら読みました。本書にも地図が欲しかったところです。


第1作『黄昏に眠る秋』ポケットミステリー版
   『黄昏に眠る秋』ハヤカワ・ミステリ文庫版
第2作『冬の灯台が語るとき』
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teppei
teppei さん本が好き!1級(書評数:71 件)

出かけるときには文庫本を必ず携帯しています。
基本的には、あまり読後感の重くないものが好きです。
こちらのサイトで皆さんのお勧め本を拝見して、次の1冊を選ぶのに参考にさせてもらってきました。どうぞよろしく。

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