ぽんきちさん
レビュアー:
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18歳の夏。えいえんに大好きなお兄ちゃんが死んだ。
紫の目と狼の牙を持つ美少女、前嶋月夜はもらわれっ子である。UFOが来るという噂のある街、無花果町に住み、高校3年生の夏を迎えた。小学校で教頭をしている父と、地銀に勤める兄貴・一郎と、そして1つ年上のお兄ちゃん・奈落と4人で暮らす。母親は月夜がもらわれてきた頃、入れ替わるように出て行った。
重度のアーモンドアレルギーを持つ奈落は、その夏、誤ってアーモンドを口にし、突然この世を去る。しかし、月夜にはどこかにまだ奈落の気配が感じられる。
奈落の友だち、高梨先輩。奈落とつきあっていたイチゴ先輩。月夜の友人である女の子集団。一郎の後輩でもある月夜の担任の先生。異国から来た季節労働者、密と約。
さまざまな人を交えて、月夜の「幽霊の夏」が始まる。
多分、このお話と主人公・月夜を大好きだと思う人がいる。反対に、大嫌いだと思う人がいる。
そしてその手前に、このお話自体に入り込めない人がいる。
入り込めない理由は、現実離れした設定かもしれないし、登場人物の凝りすぎた名前かもしれないし、月夜の一人称視点で繰り広げられる語りかもしれない。
自分はどうかといえば、入り込めない1人だった。
理由は、「生活感のなさ」である。幽霊がどうとかではない。その手前だ。
人は霞を食っては生きていけない。
ファンタジーに無粋なことを言っても仕方がないが、3歳の子を犬の子を拾うようにもらってきて、母親が出て行って、教師をしている父親が涼しげに切り盛りしてきたなんて、控えめに言っても「想像がつかない」。UFOよりも幽霊よりも、お話の舞台がそもそもファンタジックすぎる。
そんなふわふわとした設定で生と死について何か言われても、「え? そこはほんとなのか??」とたたらを踏んでしまう。
うーん。
挿入される「月紫鏡」の話は、どこかで聞いたような話だが悪くなかった。無花果が実の中に花を隠しているという話もよかった。縄文柴が混じった雑種の犬もいい味を出していた。全般に雰囲気も嫌いではなかった。
しかも、ほんとを言うと、最後はちょっと泣けたのである。
うーん。
いっそ、舞台が例えば「魔界」とか、思い切り現実から離れていたらよかったのかな・・・?
嫌いではないが、ちぐはぐな感じが残る。
この作者が自分に「合わない」のかどうかまでは判断がつかない。機会があればまた別の作品に手を伸ばすかもしれない。
*あと、酒井駒子さんの表紙はすてきだけれど、この少女は18歳よりずっとずっと幼く見える、と思う。
**月間「課題図書」倶楽部 2013-09の1冊です。この機会がなければ読まなかった作家さん、かもしれません。ご紹介ありがとうございます。何か、我ながらハンパな感想ですみません(^^;)。
重度のアーモンドアレルギーを持つ奈落は、その夏、誤ってアーモンドを口にし、突然この世を去る。しかし、月夜にはどこかにまだ奈落の気配が感じられる。
奈落の友だち、高梨先輩。奈落とつきあっていたイチゴ先輩。月夜の友人である女の子集団。一郎の後輩でもある月夜の担任の先生。異国から来た季節労働者、密と約。
さまざまな人を交えて、月夜の「幽霊の夏」が始まる。
多分、このお話と主人公・月夜を大好きだと思う人がいる。反対に、大嫌いだと思う人がいる。
そしてその手前に、このお話自体に入り込めない人がいる。
入り込めない理由は、現実離れした設定かもしれないし、登場人物の凝りすぎた名前かもしれないし、月夜の一人称視点で繰り広げられる語りかもしれない。
自分はどうかといえば、入り込めない1人だった。
理由は、「生活感のなさ」である。幽霊がどうとかではない。その手前だ。
人は霞を食っては生きていけない。
ファンタジーに無粋なことを言っても仕方がないが、3歳の子を犬の子を拾うようにもらってきて、母親が出て行って、教師をしている父親が涼しげに切り盛りしてきたなんて、控えめに言っても「想像がつかない」。UFOよりも幽霊よりも、お話の舞台がそもそもファンタジックすぎる。
そんなふわふわとした設定で生と死について何か言われても、「え? そこはほんとなのか??」とたたらを踏んでしまう。
うーん。
挿入される「月紫鏡」の話は、どこかで聞いたような話だが悪くなかった。無花果が実の中に花を隠しているという話もよかった。縄文柴が混じった雑種の犬もいい味を出していた。全般に雰囲気も嫌いではなかった。
しかも、ほんとを言うと、最後はちょっと泣けたのである。
うーん。
いっそ、舞台が例えば「魔界」とか、思い切り現実から離れていたらよかったのかな・・・?
嫌いではないが、ちぐはぐな感じが残る。
この作者が自分に「合わない」のかどうかまでは判断がつかない。機会があればまた別の作品に手を伸ばすかもしれない。
*あと、酒井駒子さんの表紙はすてきだけれど、この少女は18歳よりずっとずっと幼く見える、と思う。
**月間「課題図書」倶楽部 2013-09の1冊です。この機会がなければ読まなかった作家さん、かもしれません。ご紹介ありがとうございます。何か、我ながらハンパな感想ですみません(^^;)。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
この書評へのコメント
- ぽんきち2013-12-14 21:03
風竜胆さん
ご紹介ありがとうございます。
本作が桜庭作品初めてでして(あ、『伏』は雑誌連載中に数回分は読みましたが、全体がわからないので何とも言えないですねぇ)、我ながらちょっと掴みきれていない感じですかねぇ。
2,3作読むと何か違うふうに見えるかもしれないな、という気もするのですが。
・・・というか、もしかして、一番のお薦めというより、一番書きにくそうなところを選ばれましたか!?w
かもめ通信さん
長男が一郎で、次男は奈落はないだろ!?みたいな・・・? ちょっとお父さんの名前が知りたいですねぇ(^^;)。あとは苺苺苺苺苺、も、いやいや、それはないから!!と思いますが。
月夜の語り自体はぎりぎり鼻持ちならない手前だったかなと思います。『ライ麦畑』やら聖書やら古事記やら、ところどころちりばめられているのが「お」っと思わせて楽しかったかな。
えーっと、姐さんのレビュー、気長に楽しみに待ってます。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。

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