レビュアー:
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末永く繰り返し読んでゆきたい作家に出会った。
どことなくユーモラスな語り口。飾り気のない文章はスッと心に入り込み、目の前にその風景が見えてくる。そして、気持ちの良い風が吹いたような読後感。
・・・知らなかった、この人。いったい何者?
上林暁は私小説作家で、1980年に77歳で亡くなった。「読み継がれるべき人です。」と本書を出版してくれた夏葉社さん、その眼の確かさにお礼を言いたい。
帝大を卒業して編集者から作家に転身した人だ。妻が心の病気かかった後亡くなり、自身も脳溢血の発作で半身不随となる。その後は妹さんが口述筆記をして作品を世に送り出し、芸術選奨文部大臣賞などの受賞歴もある。(Wikipediaより)
かなり辛い人生のようにお見受けするが、文章に陰りや暗さは一切見当たらない。澄んだ明朗な眼差しで周囲を見回している。
本書の撰者は古書店主の山本善行さん。私は冒頭の三篇で上林暁に惚れこんだ。そうしたら巻末の山本さんの解説に
趣味は古本蒐集、荻窪界隈の古書店や古本市の話がたくさん収められている。『昔日の客』(夏葉社)の作者、古書店主の関口さんが訪ねてくる話もあり、撰者のユーモアに思わず笑った。著名な作家から贈られた本を眺め、自分が東京にいてこれらの人々と友人であることが不思議な気持ちだと語る表題作「故郷の本箱」。作家になった今とそれを望んでいた郷里の中学時代が交錯し、書くことへの夢と誇りがにじみ出るような一篇だ。
井伏鱒二の『海揚り』の中に「上林暁」という一篇を見つけ、病に倒れ不自由な体になっても小説を書きたいために命を保っていたことを知った。また、筑摩書房などの出版社がどんなにこの人を大事にしたかということも。
本書に記された
・・・知らなかった、この人。いったい何者?
上林暁は私小説作家で、1980年に77歳で亡くなった。「読み継がれるべき人です。」と本書を出版してくれた夏葉社さん、その眼の確かさにお礼を言いたい。
帝大を卒業して編集者から作家に転身した人だ。妻が心の病気かかった後亡くなり、自身も脳溢血の発作で半身不随となる。その後は妹さんが口述筆記をして作品を世に送り出し、芸術選奨文部大臣賞などの受賞歴もある。(Wikipediaより)
かなり辛い人生のようにお見受けするが、文章に陰りや暗さは一切見当たらない。澄んだ明朗な眼差しで周囲を見回している。
本書の撰者は古書店主の山本善行さん。私は冒頭の三篇で上林暁に惚れこんだ。そうしたら巻末の山本さんの解説に
ほんの短いものだけど、読み終わってこんな爽やかな印象を残すのだから素晴らしい。どうですか上林は随筆もいいでしょ、という気持ちで、一番最初にもってきたのだ。・・・なるほど。
趣味は古本蒐集、荻窪界隈の古書店や古本市の話がたくさん収められている。『昔日の客』(夏葉社)の作者、古書店主の関口さんが訪ねてくる話もあり、撰者のユーモアに思わず笑った。著名な作家から贈られた本を眺め、自分が東京にいてこれらの人々と友人であることが不思議な気持ちだと語る表題作「故郷の本箱」。作家になった今とそれを望んでいた郷里の中学時代が交錯し、書くことへの夢と誇りがにじみ出るような一篇だ。
井伏鱒二の『海揚り』の中に「上林暁」という一篇を見つけ、病に倒れ不自由な体になっても小説を書きたいために命を保っていたことを知った。また、筑摩書房などの出版社がどんなにこの人を大事にしたかということも。
本書に記された
芸術とは夢の表現である。という言葉が心に蘇り、いつまでも初々しく真摯で、小説家であることを心の底から愛した人を慕わしいと思った。
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「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。
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- 出版社:夏葉社
- ページ数:233
- ISBN:9784904816066
- 発売日:2012年08月01日
- 価格:2310円
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