少年は急行「北極号」に乗り込み、北極点を目指す旅に出ます。列車の中は、パジャマやナイトガウン姿の子どもたちでいっぱい。町を通り過ぎ、オオカミのうろつく森を抜け、山を越えて辿りついた北極点は、とても大きな町でした。
「こびとたちは町のまん中に集まってるよ。」
「そこでサンタが、クリスマスプレゼントの第一号を手渡すことになっているんだ。」
少年が望んだのは、サンタのそりの引き具についた銀の鈴でした。これまで耳にしたこともないような、心ときめく美しい音。
「これがクリスマスプレゼントの第一号!」
サンタがぴしりと鞭を鳴らし、トナカイ隊は空高く昇って北極の夜空に消えて行きました。
森を抜け雪山を越えて行く列車、北極点の町の風景と舞い上がるトナカイのそり。しんしんと降る雪の幻想と静けさの漂う絵、ストーリーのちょっとしたミステリーは、夢と現実の間に心を彷徨わせます。
帰路についた少年は、ポケットの穴から銀の鈴を落としてしまったことに気が付きます。でもクリスマスの朝、それは思いがけないところから出てきます。少年は喜んで鈴を鳴らしました。それなのに父さんにも母さんにも、その音は聞こえなかったのです。
鈴の音は、大人になる代償として失ったものの象徴です。しかし、誰かを喜ばせようとプレゼントを選んでいる時、美しいキャロルの音楽に身を委ねる時、イブの夜にサンタを待ちきれずに眠ってしまった子どもの寝顔を見る時、私たちにもまた、あの鈴の音が聞こえているのではないでしょうか。
最後のページの銀の鈴の絵と、大人になった少年が記す文章が素晴らしい。二度と返らぬものへの愛惜と憧憬は、静かな感動を運んできます。1986年、コルデコット賞受賞作。





「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。
この書評へのコメント
- Wings to fly2013-12-18 06:54
これが本年最後の書評になります。
スタッフの皆さま、今年もお世話になりました。拙文を読んで下さった皆様、ありがとうございました。
楽しいクリスマスを!2014年が皆様にとって良き年になりますように。また来年お会いしましょう。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - Wings to fly2013-12-18 07:40
へへ、この先ちょっとPCの前に座る時間がなさそう。なので12月の空き時間とお正月休みは、大河ファンタジーシリーズの全5部計12巻(二段組み各500ページ位)を読みまくろうと思います。
1月に戻って来ることを、青銅と鉄にかけて、氷と炎にかけてお誓い申し上げます。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2013-12-18 07:42
これだけ押し迫ってきたらもう来年の話をしても笑われないよね?
新しい年はプロフィールにある最愛シリーズの書評からスタートするのかしら?
楽しみだけれど、誘惑が怖いわ~ww
あ、Wings to flyさんと同時投稿だったみたい。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - Wings to fly2013-12-18 08:07
かもめ通信さん
あー、「氷と炎の歌」シリーズの書評は私の手にあまります。だって「壮大で美しい」「読むたびに感動する」「偉大なる作品」としか言いようがないんだもん。
読後にしばらくぼーっとした後で別の本を考えるつもりです。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - Wings to fly2013-12-19 17:32
ぽんきちさん薄荷さんありがとうございます(^^)
一日が終わり、やれやれと布団にもぐりこんだら即爆睡。なかなか目論見通りにはまいりませぬ(´・_・`)
おふたりともよく食べよく眠って師走の慌ただしさを乗り越えて下さいね!クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - Kurara2013-12-19 21:39
Wings to flyさん♪
あらまぁ~そうでしたか~。でもそういう読書月間も良いですよね( ^^)私も来年は「守り人」シリーズと岩波少年文庫はじっくり読み進めてみようという計画をぼんやり立てています(笑)
ということで、今年も貼っておきます(笑)メリークリスマス♪
http://www.noradsanta.org/クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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