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中年以降の、それも30歳も年の差がある男女の恋愛ってどんなものだろう・・・? たぶん若い頃の恋愛と決定的に異なるのは、結ばれてから別れるまでの時間がとても短いということだ。
この本は当サイトの課題図書2016に選ばれましたが、恋愛小説らしい。このところ吉本ばななや江國香織の恋愛小説を続けて読んでいたので、初めて読む作家さんの作品ではありますが、手に取ってみました。

ところが、どうにもレビューが書き難いんです。僕はもうすぐ還暦ですから、主人公のツキコさんより70代のセンセイの年齢に近いのですが、センセイと僕の間にはもっと大きな年齢差を感じてしまい、違和感がぬぐえないのです。

そこで、登場人物二人の実年齢?を推定してみました。この作品は1999年に雑誌に発表されましたが、その時点を小説の最終章の時点と仮定します。その5年前(1994年)、月子さんと先生が出あった時点で、月子さんが37歳、先生は70歳前後です。

そうすると、月子さんは1957年生まれで、なんと、僕と同い年じゃありませんか!

一方、先生はというと、1924年、大正生まれで、僕の父と同年代です。

やっと違和感の理由が判りました。このお話は、僕と同級生の女子と、僕の父親の年代の男性との恋愛物語なわけです。僕がセンセイとの間に大きな世代ギャップを感じたのは当然でした。先生は戦前の生まれで、若い頃は戦争にも行ったでしょう。そして戦後復員してから教師になったのでしょう。僕の父親がそうだったように。

実はこのレビューを書こうと思ったのは、かもめ通信さんの書評[http://www.honzuki.jp/book/1755/review/149078/]を読んだからです。
以下は飲み屋のカウンターで二人が出会うシーンへの、かもめ通信さんのコメントです。

「キミは女のくせに一人でこういう店にくるんですね」
センセイのこのひと言にカチンときた。
まったくもって余計なお世話である。

この先生の台詞にかもめ通信さんはカチンと来、僕は先生との世代ギャップを感じたのでした。でも先生の心は大正生まれにしては若々しい。月子さんの意見をはなからは否定しないし、結局携帯電話を購入するくらいには柔軟です。「携帯」ではなく、必ず「携帯電話」と呼ぶように、という但し書きは付きましたが。

ちなみに私の父は携帯電話にもパソコンにも興味を示しませんでした。
(先生と父が似ていると思ったのは、先生がパチンコをするシーンでした。中学校の教師だった父もパチンコ好きでしたが、先生同様、勝っても現金化せずに必ず景品を持ち帰るのでした。)

ところで、この小説の筋ですがごく普通の恋愛模様が描かれていると思えます。二人の年齢を気にしなければ・・・

物語の終盤、本来ならクライマックスにさしかかる辺りから、なにか物悲しい切ない感情が無視できなくなります。先生と月子さんが結ばれる前、先生はそのあたりの悩みを月子さんへ率直に打ち明けます。もう長いこと女性としたことがない、できるかどうかも分らないと。

う~ん、あと15年もしたら僕もそうなる?という個人的な感情はわきに置いても、こんな盛り上がりに欠ける恋愛小説ってこれまであったろうか。

その一方で、先生はあと何年生きられるだろうか、と不安を口にしながらも、ついに月子さんへ愛を告白するのでした。そして二人が結ばれた後、3年ほどしか二人は一緒に居られなかったのでした。

小説の中のこととはいえ、僕は先生と死別した後の月子さんが気がかりです。月子さんはまだ人生の半分を過ぎたところだったろうに。もしどこかの飲み屋のカウンターで月子さんが隣に座ったら、「その後どうしてますか?」とつい声を掛けてしまいそうです。(下心はありませんよ!)

月子さんと同い年の僕の人生も後何年あるのか判りませんが、これからもできるだけ長く奥さんと一緒にいたいなあと、この小説を読み終わって切に思うのでした。

(蛇足的な補足)
先生と月子さんの生年推定の根拠ですが、
・最終章で二人の付き合いは5年間だったと書いてある。
・最初の章で二人が出会った時、月子さんは37歳で、月子さんによれば先生は月子さんと30と少し歳が離れている。
したがって先生の生年は誤差があります。本レビューでは、33歳の年齢差があると仮定しました。
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三太郎 さん 本が好き! 1級 (書評数:103 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、現在は横浜在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。職業は化学メーカーの研究者です。

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