オーエンと名乗る富豪から兵隊島へ招待されてやってきた客たちは、お互いのことを誰も知りません。屋敷の執事のような男性から招待主はまだ来ていないと告げられても、その時は何の不安もなく食事を楽しんだのです。でも、幸せだったのはそこまででした。突然聞こえて来た男の声が、そこにいた10人の罪について語り始めたのです。
彼らは、マザーグースの「10人の兵隊さん」の歌詞と同じように、ひとりずつ殺されていきました。そして、ダイニングルームのテーブルの真中に置かれた10個の陶器の人形が、同じように1個ずつなくなっていったのです。
この作品は何度も読んだことがあるし、映画も観たのだけれど、やっぱり面白い!!この本の最後で赤川次郎さんが書かれている「永遠の目標」の文章の中にあった、「一気に読み切って、快い余韻に浸る」という言葉に「そうなの、そうなの!」と思ったのです。
ひとりずつ減っていく中で、生き残った内の誰かが犯人なのか?と考える、それぞれの人の心理がとっても面白いのです。それと同時に、自分の罪を自覚していても、「あれは自分のせいじゃない」と考えたり、「自分に過失はあったけれど、どうしようもなかったんだ」と思ったり、人間ってそういうものだよね、という部分があぶり出されてくるところが、怖いけど面白いのです。
「はい、この作品、怖かったですね。そして実に見事でした。怖いのは殺人ではなく、人の心でしたね。」と、淀川長治さんの声が聞こえてきたような気がしました。
早川書房創立80周年読書会「ハヤカワ文庫の80冊」を読もう! に参加しています。
この書評へのコメント