風竜胆さん
レビュアー:
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いくつになっても遅すぎるということはない。 必要なのは、自分の人生を切り開いていくという強い意志だけ!!
36歳で母校である高校の教師になった宮本延春さんは、中学校の時に最初にもらった通知表の成績が全科目1だったという。家の引っ越しで転校を繰り返していたのだが、気が弱く体も小さかったので、行く先々でかっこうのいじめの標的にされて、不登校を繰り返すようになったからだ。
中学卒業時も音楽と技術は2になったが、漢字は自分の名前だけ、九九は2の段まで、英語はbookしか書けないありさま。さすがに行ける高校がなかったので工務店の見習いとして就職したのだが、そこでもいじめにあう。
転機は宮本さんが23歳の時に訪れた。アインシュタインの相対性理論を一般向けに解説したビデオを視て、世界が厳密な原理に従って動いていることに感動したからだという。普通の人なら、ただ感動しただけで終わるだろう。宮本さんのすごいところは、物理学を勉強したいと、小学三年のドリルから初めて私立豊川高校の定時制に進み、そこからなんと旧帝大の一つである名古屋大学で大学院まで進んだところだ。
彼が自分の夢を進むようになった大きな要因は、通っていた少林寺拳法の道場で知り合ったという彼女の存在である。社長の娘で、国立の4年制大学を出ていたという彼女は宮本さんを支え続けた。実はアイシュタインのビデオを彼にみせたのも、豊川高校のパンフレットを持ってきたのも彼女だった。やはり女性の力というのは偉大なものだ。
本書には彼女との面白いエピソードがいくつか紹介されている。宮本さんが玉掛けの免許を取得しようと、彼女に分数の足し算を教えてもらってた時、九九が言えないことがばれてしまった。このときは、さすがに彼女もあきれて、別れようかと思ったらしい。また、大分後のことになるが、もし名大に不合格ならどうすると聞いたときには、「別れる」と即答されたそうだ。しかし実際にはずっと宮本さんの支えとなって、後には彼の奥様になっているのだから、本当にそんなことは思っていなかったのではないかと思う。彼女の期待に応えた宮本さんもすごいが、これだけ境遇の差があるのに宮本さんとの愛を大事に守ってきた彼女の方もすごい。
こんな彼女も、さすがに名大は無理だと思ったのか、宮本さんと名大に通ったら百万円を払うという賭けをしたそうだ。もっともその後彼の奥様になったために財布が一つになり、この賭けは反故になったらしい。でももしかすると、彼女はこうなることを見越してそんな賭けをしたのかもしれないなというのは深読みのし過ぎだろうか(笑)。
宮本さんを支えたのは彼女ばかりではなかった。高校入学当時働いていた会社の経営者は高校に通えるようにと色々な配慮をしてくれたし、名大を目指して勉強するために会社を辞める際にも「応援してやるぞ、頑張れ」と言ってくれたそうだ。高校の先生たちも、特別に補習をしてくれるなど彼の学びを応援してくれた。せちがらい世の中、頑張っている人の足を引っ張るような人も多いが、その一方で手を差し伸べて応援してくれる人も沢山いるのだ。まだまだこの世の中も捨てたものではない。
人は年齢と共に夢を諦めてしまうことが多い。しかし実際には、いくつになっても遅すぎることなどないのだ。自分の人生を切り開いていくという強い意志さえあれば(できれば、応援してくれる優しい彼女も)、人はいくつからでもやり直すことができるのだ。本書はそんなことを私たちに教えてくれる。
中学卒業時も音楽と技術は2になったが、漢字は自分の名前だけ、九九は2の段まで、英語はbookしか書けないありさま。さすがに行ける高校がなかったので工務店の見習いとして就職したのだが、そこでもいじめにあう。
転機は宮本さんが23歳の時に訪れた。アインシュタインの相対性理論を一般向けに解説したビデオを視て、世界が厳密な原理に従って動いていることに感動したからだという。普通の人なら、ただ感動しただけで終わるだろう。宮本さんのすごいところは、物理学を勉強したいと、小学三年のドリルから初めて私立豊川高校の定時制に進み、そこからなんと旧帝大の一つである名古屋大学で大学院まで進んだところだ。
彼が自分の夢を進むようになった大きな要因は、通っていた少林寺拳法の道場で知り合ったという彼女の存在である。社長の娘で、国立の4年制大学を出ていたという彼女は宮本さんを支え続けた。実はアイシュタインのビデオを彼にみせたのも、豊川高校のパンフレットを持ってきたのも彼女だった。やはり女性の力というのは偉大なものだ。
本書には彼女との面白いエピソードがいくつか紹介されている。宮本さんが玉掛けの免許を取得しようと、彼女に分数の足し算を教えてもらってた時、九九が言えないことがばれてしまった。このときは、さすがに彼女もあきれて、別れようかと思ったらしい。また、大分後のことになるが、もし名大に不合格ならどうすると聞いたときには、「別れる」と即答されたそうだ。しかし実際にはずっと宮本さんの支えとなって、後には彼の奥様になっているのだから、本当にそんなことは思っていなかったのではないかと思う。彼女の期待に応えた宮本さんもすごいが、これだけ境遇の差があるのに宮本さんとの愛を大事に守ってきた彼女の方もすごい。
こんな彼女も、さすがに名大は無理だと思ったのか、宮本さんと名大に通ったら百万円を払うという賭けをしたそうだ。もっともその後彼の奥様になったために財布が一つになり、この賭けは反故になったらしい。でももしかすると、彼女はこうなることを見越してそんな賭けをしたのかもしれないなというのは深読みのし過ぎだろうか(笑)。
宮本さんを支えたのは彼女ばかりではなかった。高校入学当時働いていた会社の経営者は高校に通えるようにと色々な配慮をしてくれたし、名大を目指して勉強するために会社を辞める際にも「応援してやるぞ、頑張れ」と言ってくれたそうだ。高校の先生たちも、特別に補習をしてくれるなど彼の学びを応援してくれた。せちがらい世の中、頑張っている人の足を引っ張るような人も多いが、その一方で手を差し伸べて応援してくれる人も沢山いるのだ。まだまだこの世の中も捨てたものではない。
人は年齢と共に夢を諦めてしまうことが多い。しかし実際には、いくつになっても遅すぎることなどないのだ。自分の人生を切り開いていくという強い意志さえあれば(できれば、応援してくれる優しい彼女も)、人はいくつからでもやり直すことができるのだ。本書はそんなことを私たちに教えてくれる。
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昨年は2月に腎盂炎、6月に全身発疹と散々な1年でした。幸いどちらも、現在は完治しておりますが、皆様も健康にはお気をつけください。
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- 出版社:角川書店
- ページ数:0
- ISBN:4048839608
- 発売日:2006年08月01日
- 価格:1365円
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