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たけぞう
レビュアー:
あえて理解しようとしない読書の愉しみ。
カフカは大昔に変身を読んで以来となる。
不条理小説は、同じ時期に読んだカミュの異邦人の印象がいいのだが、
その後ペストで挫折してしまった。
それでも、名前の残っている作家の作品はふと読みたくなる時があり、
この本を積んでおいた。
短篇集ならばつまみ食いができるので、挫折はしないだろうとの読みである。

読後の第一印象は、短篇にしておいてよかったということと、
知的な遊びを楽しんだということが頭に去来した。
表紙の紹介文を引用する。
実存主義、ユダヤ教、精神分析、────────。カフカは様々な視点から論じられてきた。だが、意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう。難解とされるカフカの文学は何よりもまず、たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代のお伽噺」なのだ。
うまい。こんなに的確な紹介文には出会った記憶がない。

読み始める前に実存主義を調べてみた。
Wikiによると、現実存在主義を縮めた用語らしい。代表的な思想家はサルトル。
その後、構造主義にとって代わられるが、一つの考え方としては非常に興味深い。
うまく説明できないので、Wikiでざっと読んで頂ければと思う。

実存主義という視点で読むと、この奇妙な短篇集が、ぽかりと浮かんだ世界となって面白い。なぜ・どうして・どうなるとかの、一般的な吸引力とは無縁なのである。
突拍子もないところから、想定外の展開になって、前半の展開はほったらかしで突如終わる。考えるような物語ではない。
突然降ってわいた感を楽しむ本なのだろうと解釈したら、妙に楽しめてしまった。

「中年のひとり者ブルームフェルト」「プロメテウス」などが分かり易くて楽しめた。
「プロメテウス」はこんな話だ。
プロメテウスが神々の秘密を人間に漏らしたので、コーカサスの岩につながれ、
鷲に肝臓をついばまれる。ここまでは神話の話。
第二の言い伝えは、プロメテウスは岩と一体になったという話。
第三の言い伝えは、神々も、鷲も、プロメテウスも何千年の彼方に忘れらたとの話。
第四の言い伝えは、誰もがこんな無意味なことに飽きてしまったとの話。

あとには不可解な岩がのこった。言い伝えは不可解なものを解きあかそうとつとめるだろう。だが、真理をおびて始まるものは、しょせん不可解なものとして終わらなくてはならないのだ。

これが実存主義の一端なのかと思った。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
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